近年、公益社団法人日本歯科技工士会は、国の委託を受けて「歯科補てつ物製作課程等情報提供推進事業」を積極的に推進してきた。本事業は、歯科技工士の社会的認知の向上および職能に対する理解を深めるうえで重要な意義を有し、本年度をもって全国を一巡し、今後は(仮称)「歯科技工所管理者講習会」として継続・発展させていく予定である。
私たち歯科技工士は、義歯やクラウン、ブリッジといった歯科補てつ物等の作成を担い、歯科医療に欠かせぬ役割を果たしている。しかしながら、その製作工程の多くはバックヤードで行われており、患者や社会一般には、その専門性や重要性、さらには歯科技工士が担う行為自体も十分に伝わっていないのが現状である。
本事業は、歯科技工士のみならず、歯科医師を含む歯科医療関係者に対し、歯科補てつ物の設計から作成に至る過程、必要とされる知識・技能、品質を担保するための工夫を可視化するとともに、歯科技工に関係する法令や制度の正しい理解を広めることにより、歯科補てつ物の安全性および安心の確保にも資することを目的としている。講習会、パンフレットの配布、Webコンテンツの活用、ポスター掲示など、さまざまな手法を通じて国民・医療関係者への情報提供を行い、その成果については毎年アンケートにより評価を重ねており、その結果からも社会の中で理解の輪が着実に広がりつつあることがうかがえる。
こうした取り組みは、単なる「認知の向上」にとどまらず、将来的には歯科技工士の地位向上、若年層の人材確保、そして歯科技工士自身の働きがいの醸成にも寄与するものであると確信している。
歯科技工という仕事に誇りを持ち、その価値を社会と共有すること――それは、私たち一人ひとりの声と行動によってこそ成し遂げられるものである。本事業がその契機となり、歯科技工の価値がより深く、より広く社会に浸透していくことを心から願うものである。