現在、多くの歯科医療機関では義歯やクラウンなどの製作を外部の歯科技工所に委託しているため、患者が自身の歯科補てつ物の製作過程等の情報を把握することは難しい。この状況を改善するため、厚生労働省は平成29年度から公益社団法人日本歯科技工士会に「歯科補てつ物製作過程等の情報提供推進事業」の運営を委託し、全国で開催を続けている。今年度は、新たに公益社団法人日本歯科医師会の後援を得て、鹿児島県、島根県、東京都、千葉県、滋賀県の5つの都県で事業が予定されている。
本事業では、研修会を通じて歯科医師や歯科衛生士を含む歯科医療関係者に歯科技工士に関する法令遵守の重要性を啓発し、その資質向上を目指している。これにより、患者に安心・安全な歯科補てつ物を提供し、国民が求める医療サービスの向上が期待される。また、ポスターやリーフレットを活用した情報提供の活動では、歯科医療機関と連携して患者に歯科補てつ物の製作過程に関する重要な情報(委託先、製作者、製作過程等)を広く周知する取り組みを進めている。さらに、アンケートによる事後評価も実施され、その結果から歯科技工への理解が徐々に広がっていることが確認されている。
厚生労働省はこれまで、歯科補てつ物に関する安全基準や歯科技工所の設備構造基準の改定、デジタル技術の進展に伴う歯科技工所間の連携やリモートワーク、医療機関との歯科技工士連携に対する評価など、複数の制度改定を行ってきた。我々はこのような新しい情報を得て、活かすよう日常臨床に取り組まなければならない。
本事業の実施により、歯科技工士が関係法令を遵守し、社会から信頼される職業としての地位を築くとともに、若い世代にも魅力ある職業として認識されるよう、労働環境の改善と職業価値の向上に努めていく。