公益社団法人日本歯科技工士会

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『日本歯技』2023年8月号巻頭言




災害歯科医療における歯科技工士の貢献


 近年、日本列島は1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震などの大規模自然災害が発生し、大きな被害をもたらしてきた。今後も首都直下型地震や南海トラフ巨大地震、火山噴火、地球温暖化の影響とされる巨大台風や集中豪雨などの自然災害が懸念されている。これらに備えるために国は各種インフラの強化に加え、医療界が被災者支援のための災害医療対策を推進できるようにする必要があり、行政や多職種間の連携と協力が今後ますます求められている。
 歯科界でも災害時の活動が重要視されており、歯科所見による身元確認、応急処置、口腔ケア、保健指導などが実施されている。日本歯科医師会では、JDAT(Japan Dental Alliance Team:日本災害歯科支援チーム)を設立し、発災から慢性期までのフェーズや環境に応じてその役割を変えながら、地域の歯科保健医療専門職が緊急の災害歯科医療や避難所での口腔衛生などの公衆衛生活動を支援し、被災者の健康を守り、地域の歯科医療の復旧を支援することを目指している。
 一方、歯科技工士の災害歯科医療における具体的な貢献は、歯科医師を中心とする歯科チームの一員としての活動が前提となる。具体的には、歯科医師の指示の下、義歯等の破折・破損の修理、義歯の裏層や即時義歯の製作、義歯のクリーニング、義歯の名入れ、また警察医会が行う身元確認業務が円滑に進むための義歯等の検査協力及び製作した歯科技工士(所)の特定などが想定される。
 避難所内における臨時の歯科医療機関の設置は、保健所や関連する行政機関の手続きを経て行われるが、歯科技工士は、そのような医療機関内で歯科技工業務を担当することが想定される。
 一方で、医療機関の設置がない避難所や被災者宅において、歯科技工士が歯科技工業務を行うことは、現行の法的規定では認められていない。このような問題に対処するため、関係機関や団体が「歯科技工業務のあり方に関する検討会」などで議論を行い、現行の法的枠組みや規制を見直し、災害時における歯科技工士の役割と活動範囲を明確化する必要がある。これにより、適切な法的根拠や規制が整備されれば、災害時においても歯科技工士が適切な業務を行い、歯科チームや災害医療支援体制との連携が円滑に進むことが期待される。

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