国内では時代の変化とともに、労働環境における意識の高まりが見られている。公益社団法人日本歯科技工士会(以下、本会)が発行した『2015歯科技工士実態調査報告書』では、「書面による労働契約」を結んでいる歯科技工所が39.2%、歯科診療所が30.2%という結果が示された。これが、その6年後の『2021歯科技工士実態調査報告書』では歯科技工所が58.2%、歯科診療所が45.0%にまで上昇した。このことからも労働契約を書面によって明確にするという意識は、労働者と雇用主の双方で高まっていることが分かる。
労働契約を交わさないままの就労は労働者と雇用主の信頼関係を損いやすく、働く意欲を失う可能性があるため、実は双方にとって不利益なのである。従って、労働契約の締結を100%に近づける努力は重要であり、今後さらにその機運は高まるであろう。
改正労働基準法は、長時間労働に対する企業のマイナスのイメージを払拭し、日本の「働き方」に革新をもたらすことを目指しており、これにより「働き方改革」がますます進んでいる。「働き方改革」には、テレワークや柔軟な労働時間制度の導入、育児や介護の両立支援策の充実、長時間労働の改善など、さまざまな取り組みが含まれ、労働者はより健康的で充実した生活を送ることが期待される。一方これらワーク・ライフ・バランスの改善は、優秀な人材確保により企業の競争力が向上すれば相乗効果をもたらす。我々もより良い働き方の実現に向けて取り組み、働く歯科技工士の健康と幸福につながるよう改善を重ねたい。
本会は、歯科技工士養成機関と学生への支援を目的とした『歯科技工士の就職活動のためのガイドブック』の内容を改訂するとともに、タイトルも一新して「歯科技工士の就職活動のためのガイド」として再版すべく準備を進めている。このガイドブックは、「働き方改革関連法」の紹介や解説、歯科技工士養成機関からの意見も取入れて、新卒者や既卒者を問わず、就職活動の一助となるよう全国の歯科技工士養成機関に配布予定である。
また、会員向けには『雇用安定のための手引~就職から退職まで~』を配布しているので積極的に活用いただきたい。