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『日本歯技』2023年4月号巻頭言

『日本歯技』2023年4月号 巻頭言
 
歯科補綴物に関する原価計算への意識向上

 原価計算は、適切な価格設定と利益率を確保するために重要な役割を果たす。しかし、歯科技工業は医療に付帯するサービス業であり、職業分類的に原価計算はなじまない。
 一方、原材料等の高騰は激しい。光熱費の上昇は避けられず、歯科技工界にとっても収益を圧迫することは明らかである。経営者は無論のこと、勤務する歯科技工士においても原価意識の重要性は増している。
 歯科補綴物を製作する費用には製造原価、販売費及び一般管理費がある。「製造原価」は、歯科補綴物等を製作するためにかかった材料費に加え労務費・光熱費・その他の経費全てを足し合わせたもの。「販売費」は営業や配達費、「一般管理費」は事業自体の維持・運営に要すものである。
 「製造原価」は材料費、労務費、製造経費の3つに分類され、さらに直接費と間接費の2つを組み合わせた合計6つの要素が利用される。「直接費」とは製作過程で直接的にかかった費用であり、「間接費」とは製作過程において必要な費用である。例えば研磨材などは間接材料費、自宅併設であっても賃貸料は間接経費で計上する。原価計算ではこれら6つの要素をもとに、一つの歯科補綴物にどれだけのコストがかかっているのかを算出し、損益分岐点の最適化に繋げていくことが重要である。
 
 社会保険診療における歯科補綴物等の製作技術料は歯科診療報酬の公定価格が支配する。その価格は原価によるものではなく、歯科技工料調査に基づき2年に一度改定されている。従って、原価計算をもとに公定価格の増額を求めても叶わない。我々が原価計算をもとに歯科技工料金を設定し、歯科技工料金が高ければ公定価格が上がるという仕組みをしっかり理解しなければならないのである。
 四半世紀前、日本歯科技工士会では社会主張のため『原価計算要領』として一般的モデルケースをもとに補綴物ごとに原価計算をまとめた。一方、歯科技工所の健全な運営のためには、原価計算を個々の歯科技工所ごとに行い活用すべきである
 日本歯科技工士会は原価計算の普及促進を目的にプロジェクトチームを再開させ、歯科技工界全体に浸透させる活動を行っていく。
 

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