公益社団法人日本歯科技工士会

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『日本歯技』2023年2月号巻頭言



一人親方(ワンマン)歯科技工所「労災保険」加入の受皿を設立

 勤務-歯科技工士が業務上の傷病や通勤・歯科医院への往復で事故に遭えば、労働災害。医療費10割が支給される。そして働けない間の収入減少には、給与(標準報酬月額)の約8割が補われる。共にお金の出どころは労災保険=労働者災害補償保険である。
 かたや、一人親方いわゆるワンマンラボの自営-歯科技工士による業務上の傷病や通勤・集配等移動時の事故は、過失割合に従い治療費を自己負担する。健康保険を使用できても3割は自己負担。また働けない間の減収は避けられず、個人が別建ての休業補償保険に加入していない限り、その収入は途絶える。
 この差異は国家的相互扶助制度の体系にある。労災保険の制度は、1947(昭和22)年にGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が主導し、労働者の生活を守る労働基準法制定と同時に始まった。つまりそもそもが“労働者”の権利。よって雇用主である歯科技工所は、雇う歯科技工士全員を加入させ、保険料“全額”を負担している。
 歯科技工を担う者は歯科保健医療のインフラである。歯科技工所約2万軒のうちワンマンは76%、就業歯科技工士約3万6千人で言えば半数弱は労災保険の保障の下にない。しかし75年を経た2022(令和4)年、ワンマンの歯科技工士も労災保険に加入できるよう関係法令が改正された。
 これを受け公益社団法人日本歯科技工士会は、公益性に鑑み、ワンマンの歯科技工士加入を可能とさせる独立組織「全国歯科技工士労災保険センター」を起ち上げ、募集を開始する。
 そもそも損害保険であるから、危険な職種は保険料が高く、安全な職種は保険料が低い。特別加入の保険料率では個人タクシーなど運送事業[1000分の12]、金属等加工[1000分の15]に比較し、歯科技工士は最も低い[1000分の3]となった。つまり歯科技工士は、同じ保証額を“安い掛け金”で受けることができる。そして保険でありながら、加入への年齢制限はない。保険料(掛け金)は、全額が事業経費となる。保証される収入の給付基礎日額は、前年の平均ではなく、自分が決める。保険基盤の収支には国が関与し、母体の安定は揺るがない。補償の内容・期間は、民間や自治体による同目的の保険に比べて圧倒的に有利・・・このような制度が始まる。
 この「労災特別加入」を申請するか否か、それはあくまで個人の選択である。

 

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